タクシー会社に転職したら美女がいた

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タクシードライバーに出会いを求めるなんてと思っていたら、会社に高嶺の花がいた件 [タクシー会社に転職したら美女がいた]


第一章 タクシー会社にいた高嶺の花
01 タクシー会社に転職したら美女がいた

「君はまだ若いし、他に道があるんじぁないか? それでもタクシードライバーになるのかい?」

 牧野樟太22才。
 俺はいま、リクルートスーツを身にまとい、とあるタクシー会社で面接を受けていた。
 つまるところ転職である。

 目の前には、オールバックのいかにもインテリ風の面接官が、俺の意思を確認するかのように顔をじっと見つめ、そして眼鏡をくいっと上げた。

「はい! 僕は車の運転が好きですし、接客も以前飲食で勤めておりましたので、まったく苦ではありません。何よりも、やる気があります! よろしくお願いします!」

 いかにもやる気のあるというところを、俺は全面に押し出し面接官にアピールしてみせる。
 すると面接官は、肩の力を抜き柔和な表情をうかべた。

「フフ。ちょっと意地悪な質問をしてしまったね。少し君の本気度を試させてもらったんだ。どうか気を悪くしないでほしい。──ところでうちの会社には、君と同じくらいの子達が数人いるんだ。──きっと君もすぐに仲良くなるんじゃないかな?」

「それは······つまり合格ということでしょうか?」

「合格だ! 君さえ良ければ明日からにでも来てもらっていいんだけど、どうする?」

「あ、ありがとうございます!」

 俺は嬉しさのあまり勢いよく起立し、そして腰を曲げ深々と頭を下げた。
 初めての転職にして初めての職業。

 未知なる世界に不安は多少あれど、何故か俺の心は楽しみで一杯だった。

 翌日、俺は自動車教習所に来ていた。
 まず自動二種免許を取得しないことには、何も始まらないからである。

 入所手配は既に会社がしてくれていたようで、気になっていた教習代金は全て会社持ちになるそうだ。
 つまり、無料で受けさせてくれるのだからありがたい。

「二種免許と言っても、普通の教習所なんだな。もっと特殊なところで学ぶものだと思ってた······」

 タクシーの資格を取得するには、各都道府県にある運転免許試験場で、実技と筆記の両試験を受けそれらに合格しなくてはならない。

 とはいっても、実技に関しては、自動車教習所で学びテストに合格すると、試験場での実技試験は免除される。そのため、ほとんどの人は自動車教習所(もしくは合宿)へ通い免除されることになる。

 ──つまり、普通免許の取得とほぼ同じ流れということなのだ。

 ともあれ今から約二週間教習所へ通い、そしてここを卒業することが第一目標だ。

「よし! 頑張るぞ!」

 教習所で手続き済ませるとすぐに教材などを貰い、その後はスケジュールやカリキュラムなどについての説明を受けた。
 ちょうど今日は学科のスケジュールとタイミングが合ったため、二時間ほどの授業を受けて帰ることにした。

「おつかれさん! 久しぶりの教習所はどうだった?」

 面接のときに担当してくれた田宮課長が、腰に手を当てながら笑顔で出迎えてくれた。

「少し緊張しました。あと、教室に入ったら僕よりもはるか年上の人が沢山いて、ちょっと驚きました······」

「そうだろうな! タクシードライバーと言えば、そこそこ年のいってるドライバーが多いからな」

 逆に若いドライバーは貴重だから胸はっていいぞと田宮課長は言った。

「お、そうだ牧野君! まだ時間は大丈夫か?」

「あ、はい。大丈夫てす」

 そう返事すると田宮課長は、机の上に置かれたバインダーを手に取り何かの説明を始めた。

「うちの会社で働く乗務員は、みんな班ごとに分かれることになっているんだ。それで、君もどこかの班に属す訳なのだが······。──と言っても既にどこの班にななるかは決まっているんだがな! ──いま出勤しているメンバーだけでも紹介しておくよ」

「はい、よろしくおねがいします」

「よし! じぁ、さっそく付いてきてくれ」

 そう言われ俺は田宮課長の後を付いていった。

「お、ちょうど良いところに君と同じ班の人が二人いたぞ。──おーい!」

 田宮課長は、右手をあげ同じ班だと思われる二人を呼ぶ。
 その二人はタクシーのボンネットを上げ、何やらメンテナンスの最中だったらしく、一旦手を止めてこちらに振り向いた。

「紹介するよ、こちらは淀野修次さん。君の班の班長だ」

「またうちの班に若い奴をまわしたのか?」

 色黒で目付きが鋭く、身体は細身だというのに凄い威圧感! 60代だと言っていたが、まったくそうには見えない! ······何か怖い。

「あ、あの、牧野樟太です、よろしくお願いします!」

 淀野さんは、俺の姿を値踏みをしたあと「ふん」と鼻を鳴らしたあと、踵を返しもといた場所へと戻っていった。

 田宮課長は少し呆れるように軽くため息をつき、肩をすくめた。
 すぐに仕切り直すように眼鏡をくいっと上げ、もう一人を紹介する。

「こちらは、村野謙一君。君の二年先輩になる人だ。年も二年違いだな」

「よろしくなマッキー! 分からないことがあったら何でも聞いてくれ」

 そう言うと村野さんは手を差し出し、握手を求めた。

「はい、よろしくおねがいします村野さん!」

 差し出された手を俺はガシッと掴み握手する。
 ······ちょっとだけホッとした。
 ──この人が淀野さんみたいじゃなくて本当に良かった······。

 その後、他の三人もそつなく紹介され残りはあと一人となった。
 淀野さんみたいな人が他にも居たらどうしようかと少し心配していたが、それもどうやら杞憂に終わりそうだ。

「あと一人っと······。──お! ちょうど帰って来たな副班長」

 仕事を終えたであろう一台のタクシーが、会社の駐車場へと吸い込まれるように入っていくのが見えた。
 田宮課長が「最後の一人だ」というと、その車のもとへと小走りにむかい俺も後を追う。

 俺と田宮課長がタクシーの側へ近付いた時、『ガチャ』とタイミングよくドアが開く。

 すると車内から若い女性が降りてきた。
 長く綺麗な黒髪は一つにまとめられ、その立ち振舞いは凛としていた。まるでどこかのお嬢様のようだ。

 誰がどう見ても美人だといわしめるその容姿は、あまり化粧けがないにも関わらず肌は白く、そして目鼻立ちがくっきりと整っている。
 
「──っ!?」

 予想だにしていなかったこの展開に、俺は思わず声にならない声をあげ、そして息を飲んだ。

 ──こんな美人見たことがない······。

「──野君? ──おーい牧野君? 大丈夫か?」

「あ、いや、すいません······」

「この人は君が属する班の副班長、宮坂美咲さんだ」

「あ······、ま、牧野樟太です。よ、よろしくお願いします」

 あーダメだ! 俺、そもそも女性と会話すんの苦手なんだよな······。たださえこんな美人······。 き、緊張して目が合わせられない······。

 すると宮坂さんは俺の顔を一目みた瞬間、一瞬固まった。

「牧野しょ············!? ゴホン。······またうちの班に若い人ですか? 別にいいですけど······」

 曲がってもいない制服のリボンを、宮坂さんは仕切りに直し、どこか焦っているようにも見えた。しかも今のセリフどこかで聞いたのような······。

「よ、よろしく······じぁ······」

 そう言うと彼女は、そのまま事務所へと行ってしまった。

「ん? 今日の宮坂さんは調子でも悪いのかな?」

 不思議そうに頭を傾げる田宮課長に対し、俺は宮坂さんの姿に惚けながら見送った。



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