「工業高校でたくさん資格を取らされるけど、これって本当に将来役に立つの?」
「どうせ就職したら使わないし、意味がないのでは?」
ネットやSNSで時折目にするこのような意見。
これから資格試験に挑む生徒や、それを支える保護者の方にとっては不安になる言葉ですよね。
今回は、工業高校における資格取得の「本当の価値」について、多角的な視点から深掘りしていきます。
この記事を読めば、工業高校で取得する資格がいかに有用で価値あるものだと理解できます。
工業高校生が資格を取ることに意味がないと何故そう思うのか?
「意味がない」と主張する人の多くは、実務との乖離を理由に挙げます。
その理由は
現場で使わない知識がある: 資格試験の内容が古かったり、特定の現場では使わない技術だったりする場合【取っても無駄だった】と感じてしまう。
資格よりも実力が大事: 【免許を持っていること】と【仕事ができること】は別物であるという極論。
ペーパーテストへの不信感: 暗記だけで合格できてしまう資格の場合、実技が伴わないため評価されにくいという意見。
確かに、資格があるだけでプロとして即戦力になれるわけではありません。しかし、それは資格そのものに意味がないということとは別の話です。
工業高校で取得する意味がない資格は実際に存在する!?

結論から言えば、「完全に無意味な資格」は存在しません。 ただし、「優先順位」は確実に存在します。
例えば、将来進む道と全く関係のない分野のニッチな資格を、時間を浪費してまで取得する必要があるかと言われれば、疑問が残るかもしれません。
また、一部の民間検定の中には、認知度が低く評価に繋がりにくいものもあります。
例えば
・計算技術検定
・情報技術検定 など
しかし、工業高校で推奨される国家資格や技術検定は、その分野の基礎知識を網羅している証です。
たとえ直接業務で使わなくても、その分野の共通言語を理解しているという証明になるため、決して無駄にはなりません。
さらに、学校による評価(推奨している場合)も捨てきれないため、取っておくほうが良いでしょう。
工業高校で資格を取得するメリット

資格取得の本当の価値は、単なる知識の証明以上のところにあります。
指定校推薦や総合選抜において有利になる
進学を目指す生徒にとって、資格は強力な武器です。大学や専門学校の指定校推薦、総合型選抜(旧AO入試)では、調査書の【取得資格】欄が重視されます。
特に難関資格や複数の資格を保有していることは、学力試験だけでは測れない意欲と専門性の証明となり、合格率を大きく引き上げます。
就職の面接にも効果を発揮する
高卒採用の市場において、企業はどれだけ仕事ができるかよりも【どれだけ伸びしろがあるか】を見ています。
資格を複数持っている生徒は、教えられたことを吸収する土台があると判断されます。
また、資格手当がつく企業も多く、初任給から同期と差がつくケースも珍しくありません。
努力や継続性が評価される
これが最も大きなメリットかもしれません。資格取得という目標に向かって、放課後や休日を削って勉強する。
その合格という結果を出すまでやり抜いたプロセスこそが、社会で最も信頼されるポイントです。
コツコツ努力できる人間ですと言葉で言うよりも、合格証書を提示する方が何倍も説得力があると私は思います。
独占業務や知識としての証明にもなる
電気工事士や危険物取扱者など、その資格がないと従事できない業務(独占業務)は法的に守られています。
これらは意味がないどころか、特定の業界で働くための「パスポート」です。
また、資格試験を通して体系的に学ぶことで、独学では抜け落ちがちな安全管理や法規の知識が身につき、自分自身の身を守ることにも繋がります。
独占業務のないITパスポートや基本情報技術者などの資格は意味がない?

「電気工事士のようにその資格がないと仕事ができないわけではないから、ITパスポートなどは取っても無意味だ」という声もあります。
しかし、これは見誤った考え方です。
今の時代、製造業でも建設業でも、あらゆる現場でDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。
「ITパスポート」は、社会人の共通言語: 今やIT知識は、英語や漢字と同じレベルの「教養」です。これを持っていることは、現場のデジタル化やセキュリティリスクを正しく理解できるリテラシーのある人材であることを証明します。
「基本情報技術者」は論理的思考の証明: この試験に合格できる論理的思考力と基礎体力は、エンジニアとして高く評価されます。
たとえプログラマーにならなくても、工場の自動制御やCAD、データ管理など、工業のあらゆる場面でその知識は応用可能です。
独占業務がない資格は、直接「金を稼ぐ道具」ではなく、あなたのビジネスパーソンとしてのOS(基盤)」をアップデートするもの。その価値は、入社後のキャリアアップの速さとなって現れます。
工業高校生がやってはいけない資格の取り方
せっかくの努力を無駄にしないために、以下の「やってはいけない取り方」には注意が必要です。
「資格コレクター」になるだけで終わる:
目的もなく、難易度の低い簡単な資格ばかりを数集めるのは危険です。
企業が見ているのは数ではなく一貫性と難易度です。
自分の進路に関係のない資格を10個並べるより、一つ難易度の高い国家資格に挑戦する方が、評価は圧倒的に高まります。
「過去問の丸暗記」だけで中身を理解しない:
試験に通ることだけを考え、原理原則を理解せずに丸暗記で乗り切る方法はおすすめしません。
工業の現場では「なぜそうなるのか」という理屈が重要です。中身が伴わないまま合格しても、実技試験や就職後の現場で必ずボロが出てしまい、「資格持ちなのに何もできない」というレッテルを貼られる原因になります。
「みんなが受けるから」という理由だけで受験する:
自分の将来のビジョンがないまま、周囲に流されて受験するのはモチベーションが続きません。
「この資格は自分の希望するあの企業の仕事にどう繋がるのか」を一度立ち止まって考えることが大切です。目的意識のない勉強は、時間という貴重な資産を浪費することになりかねません。
まとめ:工業高校での資格取得は、一生を支える「土台」と「信頼」を築くプロセスである

「工業高校で資格を取ることに意味がない」という言葉は、一部の側面しか見ていない偏った意見に過ぎません。
資格は、あなたの将来の選択肢を広げ、「努力の証明」を形にし、プロとしての第一歩を支えてくれるものです。
もし今、試験勉強が辛いと感じているなら、それは自分の価値を高めるための「自分への投資」だと思ってみてください。
その努力は、卒業後のあなたを必ず助けてくれるはずです。
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