工業高校(高卒)からでも私鉄・JRに就職できる?電鉄業界を目指す親子に伝えたい本当の話

子育てネタ

​「鉄道会社に就職したい」
「将来は新幹線の運転士になりたい」
​工業高校に通うお子さん、あるいは進学を控えたお子さんからそんな夢を聞かされたとき、あなたならどう答えますか?

​「安定していて安心だ」と喜ぶ反面、心のどこかで
「高卒だと出世に響くのでは?」
「大学に行った方が門戸が広いのでは?」
そんな不安がよぎるのも、親心として当然のことです。

​鉄道業界は、公務員と並んで根強い人気を誇る“超安定業界”ですが、その内部事情や採用の仕組みは意外なほど知られていません。

実は、親世代の「学歴観」でアドバイスをしてしまうと、お子さんの貴重なチャンスを潰してしまう恐れすらあります。

​この記事では
​「高卒でもJR・大手私鉄に採用されるのか?」
​「技術職にはどんな仕事があるのか?」
​「新幹線運転士へのルートは?」
「工業高校と大学以外で見つける鉄道就職ルートある?」
​といった疑問に筆者が答えてみたいと思います。

読み終える頃には、お子さんの夢を支えるために「今、親として何をすべきか」が明確になるはずです。

※この記事は、筆者の調査および関係者の意見などに基づき作成しています。採用状況は年度や各社によって異なるため、確実性を期すためには各学校の「指定校求人」の実績を確認し、進路指導の先生へ相談することをお勧めします。

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実は超有利? 工業高校から私鉄・JRへの就職ルート


結論から申し上げます。工業高校からJR・私鉄への就職は、極めて現実的であり、むしろ「王道」のひとつです。

​JR各社や大手私鉄は、毎年一定数の「高卒採用枠」を維持しています。特に以下の専門学科は、鉄道の安全運行に直結する知識を持っているため、非常に重宝されます。

​電気電子科:変電所、信号システム、架線のメンテナンス
​機械科:車両整備、点検、工作
​土木科:線路(保線)、トンネル、橋梁の維持管理

​鉄道会社は「現場の技術」を継承することを最優先します。工業高校で培った「安全に対する規律」と「基礎技術」は、大卒の一般教養よりも即戦力として高く評価されるケースが多いのです。

​鉄道を支える「プロフェッショナル」な仕事たち
​「鉄道=運転士」というイメージが強いですが、高卒採用の多くは鉄道の心臓部を支える「技術職」としての活躍が期待されています。

電鉄の主な配属先

設備職(電気・システム系)
電力・信号・通信を担う「鉄道の神経」を守る仕事です。変電所の点検や駅の自動改札機の修理など、工業高校の電気系学科の知識がそのまま活かせます。

保線職(土木系)
「線路の番人」です。レールの歪みをミリ単位で修正し、構造物を守ります。深夜作業も伴うタフな仕事ですが、インフラを根底から支える誇り高い職種です。

現業職(駅務・乗務系)
駅員からスタートし、車掌、運転士へとキャリアアップしていく職種です。多くの子どもたちが憧れる「運転士」への入り口はここにあります。

【徹底比較】高卒vs大卒。出世や給与に「超えられない壁」はあるか?

​「大卒の方が有利なのでは?」という疑問に対し、採用区分による違いを表にまとめました。

比較項目 高卒(プロフェッショナル職等) 大卒・院卒(総合職)
主な役割 現場のスペシャリスト。実務のプロを目指す マネジメント・経営。将来の幹部候補
初期配属 全員が現場(駅・車両・設備など) 現場経験後、数年で本社・支社へ
昇進スピード 着実な年功序列+試験による昇格 比較的早い段階で管理職試験を受ける
現場での信頼 叩き上げとして絶大な信頼を得やすい 若いうちからリーダーシップを求められる
新幹線運転士 チャンスあり。現場実績が重視される 制度上は可能だが、本社異動が多いため稀

現場主義の鉄道業界では「高卒」が敬遠されることはない​鉄道業界は、何よりも「事故を起こさないこと」が評価される世界です。

高卒だからといって不当に差別されることはありません。むしろ、「若いうちから現場の酸いも甘いも知っている叩き上げ」は、現場の班長や区長といったポストにおいて、大卒よりも強い信頼を勝ち取ることが多々あります。

「新幹線の運転士」への道。高卒からでも夢は叶うのか?

お子さんが「新幹線の運転士になりたい」と言っている場合、その道のりは決して楽ではありませんが、高卒入社からのルートは確立されています。

​新幹線運転士になるための一般的なステップ

JR各社に「現業職」として入社(高卒・大卒問わず)

​駅係員として数年勤務し、鉄道の基本を学ぶ

​試験に合格し、在来線の車掌へ​さらに試験と訓練を経て、在来線の運転士へ(国家資格取得)

​在来線での無事故実績を積み、選抜試験に合格して新幹線運転士養成へ

​ポイントは、いきなり新幹線に乗れる人は一人もいないということです。

また、運転士には学歴以上に「適性(医学的適性)」が求められます。視力、聴力、精神安定性、反射神経など、これらは努力だけではどうにもならない部分もあり、非常に厳格に審査されます。

​高卒だからなれないのではなく、「一握りの選ばれた人だけがなれる」のが新幹線運転士の世界です。

高卒で入社すれば、大卒よりも4年早く現場経験を積めるため、適性さえあれば若くしてハンドルを握るチャンスを掴めます。

親として知っておきたい、鉄道業界の実態

​安定した業界ですが、親として覚悟しておくべき現実もあります。

​不規則な勤務体制:宿泊勤務(泊まりの仕事)や深夜・早朝勤務が当たり前の世界です。友人と休みが合わないことも増えるでしょう。

究極の規律社会:1秒の遅れ、1つの確認ミスが重大事故に繋がります。「マニュアルを守る」「時間を守る」ことにストレスを感じるタイプには厳しい環境です。
​逆に、「決まったルールを完璧にこなすことに達成感を感じる」「機械や構造物が好き」「チームでインフラを守りたい」というお子さんにとって、これほど働きがいのある職場はありません。

【実録】高卒でJRか、大学進学か。ある工業高校生の悩み

​ここで、同じ悩みを持つ親子にとって非常に示唆に富む、Yahoo!知恵袋でのやり取りをご紹介します。

現在、僕は工業系の高校生です。工業系の高校だけあって、JRから求人がぼちぼち来ているようです。
そのため、高卒でJRへの就職を考えています。しかし、両親は「今どき高卒なんかで就職してもロクなこと無いぞ」と進学してからJRに就職するほうがいいと言っています。

①高卒でJRに就職すると給料面や立場上で大卒で就職した場合より、かなり不利になるんでしょうか?
②高卒からの就職での利点はあるのでしょうか?
ちなみに、JRは西日本か貨物を考えています。
引用先-Yahoo知恵袋

​この問いに対し

元・鉄道マンと思われる回答者からは、非常に熱のこもった回答が寄せられました。
​回答:質問者様の状況は十数年前の私とほぼ同じです。
「高卒じゃ新幹線の運転士になれない」「高卒より大卒の方が採用されやすい」等々いろいろ言われましたが、これら全てウソでした。
工業高校なら、大学に進学した方がロクなこと無いかもしれません。高校には大企業・上場企業からかなり求人が来ていたのに、大卒でそれらの企業には就職できなかったというのが大きな理由です。
​①大卒で就職した方がかなり有利なんてことはない。学歴よりも本人の能力や入社後の活躍・頑張りの方が影響が大きい。
②採用の倍率が低い(高卒採用は校内選考があり受験者数が決まっているので数倍程度、大卒採用は相当倍率が高い)。大学の学費がかからない。4年間分早く給料が稼げる。同い年の大卒社員より先輩になれる。
引用先-Yahoo!知恵袋

​この回答にある「高卒採用は倍率が低い(指定校求人の場合)」という点は非常に重要なファクトです。

大卒でJRに入社しようとすれば、全国の大学生との激しい競争(数千倍になることもあります)に勝ち抜かなければなりませんが、工業高校の指定校求人であれば、校内選考を通過した時点で合格の可能性は飛躍的に高まります。

工業高校から実際に私鉄やJRに就職できるのか?

ここまで読んでみて、工業高校生(高卒)でも就職できるのだとご理解頂けたかと思います。

しかし、実際のところどの工業高校で、どれだけの採用人数を採用しているのかが知りたいかと思います。

その方法を紹介します

どの電鉄会社が採用しているの確認する方法

確認方法は以下のとおり

1.学校のホームページの【就職実績(状況)】から確認
2.進路指導の先生に直接聞く
3.進学前なら学校説明会のとき個別に聞く

特に1に関しては、過去どの鉄道会社から何人採用されているか書かれています。各学校ごとに電鉄会社や採用人数が異なりますので、一度目を通しておくことをおすすめします。

これは大阪府にある工業高校から就職している会社の一覧です。
・JR西日本
・大阪メトロ
・大阪モノレール
・阪神電気鉄道
・阪急電鉄
・近畿日本鉄道
・京阪電気鉄道
・南海電気鉄道

採用人数は少ないものの毎年どこかしらの電鉄に採用されています。

例えばこちらの工業高校↓
大阪府立都島工業高等学校
(※進路一覧をご覧ください)
大阪の歴史ある工業高校なのですが、毎年どこかの電鉄会社へと就職されているのが分かるはずです。

このように、公式サイトから情報を集めることにより、どこの工業高校へ進学すればよいのか1つの目安になるのではないでしょうか。

電鉄会社へと就職できなかった場合の対策

電鉄会社から求人募集があったとしても、必ずしも応募出来るとは限りません。何故なら、応募順位は成績上位のものから順に応募資格するからです。

さらに、学校によっては応募が少ないケースも大いにあります。

その場合どうすればよいのか?

1.大学に進学する
2.鉄道関係の専門学校へ入学する

私がもし学生なら2を選びます。
電鉄会社へ就職したいという気持ちが強いなら、遠回りせずに2を選びます。

例えば大阪にはここのような鉄道関連の専門学校があります。

大阪鉄道専門学校(就職実績)

大阪のホスピタリティー・アカデミー(鉄道サービス学科)

いかがでしょうか?多くの方々が鉄道会社へと就職されているのが分かるかと思います。

もし、鉄道会社へと就職したいとつよく思うなら、こういうルートもあることを覚えておきましょう。

まとめ:お子さんの「好き」を、最強の武器にするために

​鉄道業界への就職において、工業高校卒という経歴は決してマイナスではありません。むしろ、現場を支えるプロを目指すなら、最短・最良のルートになり得ます。

​もちろん、親として「大卒の資格を持っておいてほしい」という願いもあるでしょう。

しかし、もしお子さんに「この仕事がしたい」という強い意志があるのなら、高校に来ている貴重な求人(チャンス)を逃さないことも、ひとつの戦略です。

​今、親御さんができることは、以下の3点です。
1.​学校に届いている求人票を一緒に確認する(JRや大手私鉄の名前があるか?)

2.​オープンキャンパスや鉄道イベントで「現場の雰囲気」を体感させる

3.​「欠席・遅刻」をせず、生活リズムを整えるよう促す(鉄道会社が最も重視するポイントです)

​お子さんの夢を「綺麗事」で終わらせないために。まずは、その情熱を否定せず、親子で現実的な「合格へのレール」を敷いてあげてください。

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